令和6年10月から社会保険の適用拡大とは
2024年10月から、従業員数が51人以上の企業において、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者も社会保険の加入が義務化されることになりました。
ここでいう「従業員数」とは以下のA+Bの合計、いわゆる「現在の厚生年金保険の適用対象者」であり実際の従業員数とは異なります。
- A:フルタイムの従業員
- B:週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員
新たな加入対象者(短時間労働者)
2024年10月以降の新たな加入対象者は①~④のすべてを満たした方が対象となります。
- ① 週の所定労働時間が20時間以上である
- ② 月額賃金が8.8万円以上である
- ③ 2か月を超える雇用見込みがある
- ④ 学生ではない
短時間労働者の要件
先ほどの①~④の加入要件を詳しく見ていきましょう
① 週の所定労働時間が20時間以上である
就業規則や雇用契約書等により、通常の週に勤務すべき時間が週20時間以上勤務する契約となっているかで判断することになります。したがって、契約上週20時間に満たない労働者が時間外労働を行ったことにより週の労働時間が20時間を超えた場合は加入対象とはなりません。
また、所定労働時間が1か月単位で定められる場合は1か月の所定労働時間を12/52で除して、1年単位で定められる場合は1年間の所定労働時間を52で除して1週間単位の所定労働時間を算出します。
なお、契約上週所定労働時間が20時間に満たない場合でも、時間外労働時間を含む実労働時間が2カ月連続で週20時間以上となり、なおも引き続くと見込まれる場合には、3カ月目から加入要件を満たすものとされています。
② 月額賃金が8.8万円以上である
月額賃金とは下記の賃金を除いた賃金とされています。
- 臨時に支払わせる賃金および1か月を超える期間ごとに支払われると賃金
- 最低賃金法で参入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)
- 時間外手当、休日手当、深夜手当
③ 2か月を超える雇用見込みがある
契約期間が2か月を超える契約となっている場合、また契約期間が2か月以下であっても就業規則や雇用契約書等おいて「更新される」または「更新される場合がある」旨が明示されている場合や、同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、契約更新等により 最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合は、加入要件を満たすことになります。
④ 学生ではない
ここでいう「学生」とは夜間に授業が行われる定時制や通信制の過程ではないいわゆる全日制の、高等学校、高等専門学校、中等教育学校、大学、短期大学、専門学校等に在学する学生・生徒をいいます。
なお、休学中の者および内定者を各学校の卒業前にアルバイトとして雇用する場合等、各学校の卒業を予定している者であって、卒業後も引き続き雇用することが予定されている場合は、各学校に在学中であっても加入要件を満たすことになります。
適用拡大による対応について
今回の適用拡大により新たに社会保険の適用対象者となった場合は、会社や従業員の意思に関係なく強制的に被保険者となります。従業員が社会保険加入になることで、企業にとっては保険料の負担が増加することになります。
厚生年金、健康保険の保険料は企業と従業員で折半しているため、社会保険の加入者が増えると企業が支払う保険料が増えることになります。また、従業員にとっては、社会保険料が控除されることにより手取りの額が減ることになります。
これまで配偶者の勤務先給与の扶養手当、家族手当等の基準内で働いていた従業員は今回の社会保険加入により扶養から外れてしまうことを避けるために、社会保険に加入しないで今まで通りの勤務を希望したり、働くことを控える従業員が出てくることも考えられます。
今回の適用拡大で該当することになる会社は、対応として、新たに加入対象となる短時間労働者(パート・アルバイト)従業員に今回の制度の内容を会社説明会などで周知して、状況に応じて面談を行う必要があるかもしれません。
説明会では、社会保険に加入することにより将来の年金額が増えることや傷病手当金や出産手当金等の手当がもらえるメリットを伝えることも重要です。
不明点や懸念事項がある場合は、ぜひ半田社労士事務所にご相談ください。